キャラたちの独り言(再録)

和樹
僕が、兄ちゃんのことを好きだなぁって思うようになったのって、多分、まだ兄ちゃんが大学生だった頃だと思う。
当時、僕は小学生だから、我ながら早熟だよね。
僕が、兄ちゃんが好きだって思ったのと、兄ちゃんが好きだって言ってくれたのと、どっちが早かったのだろう。
そのくらい、ホントはほとんど同時に恋に落ちてたんだ。
でも、いまだに兄ちゃんは、兄ちゃんが僕を同性愛の道に引きずり込んだんだと思ってる。それも、責任を感じてくれてるんだ。
小学生に手を出したんだから、仕方がないよね。こればっかりは、僕が何を言っても本気に受け取ってくれないから、僕ももう言わない。
でもね、兄ちゃん。僕は、ホントに、兄ちゃんのことが好きなんだよ。それだけは、わかって欲しい。
同情とか兄弟愛の勘違いとか、そういうんじゃないんだ。
だって、僕は、兄ちゃんに抱いて欲しいんだもん。ぎゅって抱きしめて、エッチなこともいっぱいして欲しい。
したい、って言ってくれるんだから、わがままな望みじゃないよね?
ホントに、して欲しいんだ。
兄ちゃんはきっと、僕が無理してると思ってるんでしょう?
そりゃね、中学のとき、無理やり犯されそうになったのも通算3回あるし、実際に1回されちゃったし、汚された身体だけど。
だから、好きなら僕を抱いてよ。嫌な記憶はみんな忘れさせて。
僕は兄ちゃんのモノだって。ちゃんと教えて。
優しいだけじゃイヤ。時には、乱暴なくらい、欲しがってくれなくちゃ。
不安なんだよ、ホントは。こんな汚されちゃった身体は、汚くて抱きたくない、って、いつ言われるか、ホントはそう思ってるんじゃないかって。ずっと不安なんだ。
なんてね。
でも、良いの。ちゃんと、抱いてくれるって、約束してくれたから。
うふ。今夜が楽しみだなぁ。

はるか
June-netのショートショートで選考外になった作品です。
今投稿用に書いている作品の番外編?です。
本編は、たぶんB-BOYノベルズに投稿して落ちた時点で公開すると思います。
ネタがコバルト向けなので、たぶん落ちると思いますが、来年まで温存しておくのが嫌なのです。(泣)
----------------------------------------------------------------
 この男は、本当に、救いようのないバカだ。
 自分の立場を考えれば、男なんかを愛人にして侍らしておく場合じゃなかろうに、俺なんていうどうしようもない男を囲っているところが、どうしようもなくバカだと思う。
 そろそろ結婚して跡継ぎを作らないといけない歳だ。そんなことは、素人の俺にもわかる。
 それなのに、道端で拾った、短気で強引でわがままで、何で生きてんだお前、って感じの、しかも男を、何でこんなに愛してくれるのか。
 俺には不思議で仕方がない。
 いや、バカだから、なんだ。
 でなきゃ、関東連合第二位に君臨するやくざの大親分の若様が、平々凡々な俺なんかに、見向きをするわけがない。
「こら、春賀。お前、何拗ねてんだよ。一週間放っておいた件は、ちゃんと謝っただろう? まだ怒ってるのか?」
「そんなんじゃない」
 この男の猫なで声は、一体何人の女が聞いてきたのだろう。元々ノンケらしいから、男は俺だけだろうけど。いや、俺だけだと思いたい。それだけは、プライドがうずく。
「だから、俺は潔白だってば。さっきも証明したろ? お前だって、認めたじゃないか」
「しばらく出してないのは認めたけどな」
「はるかぁ」
 そんな情けない声、手下の連中が聞いたら驚くと思う。
 これでも、やくざの若様らしく強面の容貌やら生まれつきの鋭い目つきやらで、恐れられつつも尊敬のまなざしを受けている立場だ。
 そんな立場だからこそ、俺は自分の置かれているこの場所が、場違いだと思う。
 でも。
 この場所から離れたくない。
 愛人で良い。俺のことを少しだけでも想ってくれていたら、それで良い。
 ここから逃げ出すのが、この場所から足を踏み出すのが、恐い。
「どうしたら機嫌直してくれるんだよ。何だ? 生理か?」
「……吹っ飛ばすぞ」
 本気で目を据わらせる。この男はそんな俺に、わっはっはと笑った。
 むかつく。
 なんか、無性にむかつく。
「イテッ」
 気がついたら、頬っぺたをつねり上げていた。やばい。無意識とはいえ、手加減を忘れた。
 怒ったか?
「ちっとはすっきりしたか? ん?」
 ダメだ、効いてない。
 はぁ。
 ため息が口をつく。
「しょーがねぇな。気分転換に、ドライブでも行くか。これから出れば日の出に間に合うだろ」
「明日、会議だろ?」
「気にするな。俺がいなくても、今回の件は進藤に任せておけば良い。それより、お前の機嫌が悪いと、組の連中が上から下までみんなビビッて、仕事にならねぇ。そっちの方が問題だ」
 は?
 この男の問題発言はいつものことだし、今更気にもしないが、今のは驚いた。
 何で俺の機嫌が組の仕事に影響するんだ?
「何驚いてんだよ。おっかねぇ姐御に八つ当たりされたら、やる気失せて当然だろうが」
「姐御? この家の姐さんは、去年亡くなったろ?」
「おま……。本気で言ってる?」
 本気も何も、それが事実だ。こいつの母親は、去年がんで亡くなった。ここの一家はとにかく女っ気がなくて、今や屋敷の中に女性がゼロ。だから、姐御、に当たる人間もいない。
 何を言ってるんだ、こいつは。
 とうとう脳の血管がプツッといったか?
「お前なぁ。そんなすっとぼけ方すると、加納が泣くぞ。こんなにお世話してるのに、ってよ」
「何だよ。だって、姐御なんて、いないだろ?」
「お前だよ。お前」
「……俺?」
 ビシッと指差されて、俺の目が丸くなる。真似をして自分を指して、聞き返すくらいが関の山。
 いや、だって、俺、男だし。
「何だよ。本気で気づいてなかったのか? うわぁ。東大卒のエリート弁護士様のくせに、めちゃくちゃ鈍感だな。親父にも認められてる、正式なうちの次期姐御だぞ、お前」
「うそっ。だって、俺、男だぞ? しきたりとかも何にも知らない素人だし、跡継ぎ作れないし。冗談だろ?」
「マジ。跡継ぎって話なら、別に血ぃ繋がってなくても良いんだし。っていうか、そんなこと気にしてたのか? お前、一生俺についててくれる気ではいたんだろ? 今更、何でそんなに驚くかな」
 何でそんなにって、それは、だって、寝耳に水だろう。
 確かに、親父さんにも紹介されて、だからこの屋敷の一角に部屋を借りてても何も言われていないけれど。厄介なモノを拾ってきた、とでも思われてるんだろうと、思ってた。
 だって、俺は、大型犬とか大型猫とか、愛玩動物のたぐいに分類するのが、丁度良い立場だ。やくざの元締めに男の愛人なんて、マイナス要素にしかならないだろうに。
「あ、おい、春賀。泣くなよ、お前。俺がお前の涙に弱いの、わかってんだろうが」
 そんな優しい声が、だから、泣けてきちゃうんだよ。バカ。
 やっぱり、この男はバカだ。
 バカだから、俺みたいなどうしようもない奴を、そんなに愛してくれるんだろう。
「春賀。愛してる」
 優しく俺の快感の糸をクリーンヒットで刺激する、甘い声色に、俺の身体は勝手にとろけていく。支えてくれる胸に、すがり付いてしまう。
「ドライブ中止だ。やっぱり、俺のモンになれ」
 この男の照れたような身勝手な台詞に、その後の嵐のような行為の予感に、身体が勝手に震える。もう、止められない。そういう身体にしたのも、この男。
 どうしてくれるんだ。この、バカ。
 悪態をつく。
 でも、この男に効いた様子はなくて、反対に嬉しそうに笑われてしまう。
「一生そばにいろよな」
 それは、行為の時には何度も聞いているのに、まるで初めて聞くプロポーズのようで。
 こいつの熱い身体に溶かされて、襲い来る熱にうかされて、心も身体も、際限なく、目の前の男を追い求めていく。
 理性とは裏腹に、どんどん暴走していく自分を、止められない。
 そうして素直になってしまえば、どんなにこの男を愛しているかを、思い知らされる。
 本当にバカだったのは、俺なのかもしれなかった。

小山内
いや、驚いたね。
1年ぶりに酒井に呼び出されて、花見なんぞに行ってみたら、あいつ、自分の従兄弟と付き合ってやんの。
いや、悪いとは言わないけどさ。
男同士、とかいうことであれば、俺だって他人のことは言えないし。
でも、酒井はノンケだと思ってたんだけどなぁ。
案外、俺の観察眼も当てにならないね。
そこはでも、俺なんかより察しの良い斎木でさえ気づかなかったんだから、仕方のない話か。
その相手。同じ酒井だから名前で呼ぶけどさ。
マキっち。
美人なんだよ。これが。
高校の卒業式の日なんか、それで学校中が大騒ぎだったもんなぁ。
顔の造作だけであんなに騒ぎを起こせるなんて、気の毒な奴だ。
アレを三年間隠し通したマキっちには、脱帽するしかないわけだけど。
そんなのが相手だから、きっと、苦労するぞ。
酒井もまた、気の毒に。恋敵には事欠きそうもない。
でも、あれ、恋、なのかなぁ?
微妙に怪しい。あの関係は、恋にしては落ち着きすぎだろう。
そこに至る過程で、何かあったんだろうな。
うーん、野次馬の血が騒ぐ(^^;

ジオディート
人は誰でも、いつかは大事な人を失うときが来る。
それは、わかっていたつもりなんだ。
でも、実際に失ってみると、どんなに大切だったのか、しみじみと思い知る。
信じられない話だけれど、本当に、こんなに依存していたんだって、思い知る。
ずっと、あいつなんていなくても、生きていけると思ってた。
好きだけど、それだけだから。
そう、思ってた。
違ったんだ。好きだから。失えないんだ。
すでに、自分の半身だったんだから。
最近では、自分を客観的にしか見られなくなった。
自己分析して、馬鹿だな、お前、なんて言ってやるのが関の山で。
それ以上のことはできなくなってしまった。
だって、自分の内面を見つめてしまったら、自分を自分と認識してしまったら、きっと目が溶けるほど泣きつづけてしまうから。
声がかれるまで、泣きつづけてしまうのは、目に見えてるから。
これが、俺の保身手段で、唯一まともに生きていく術で。
本当は、戻ってきて欲しい。
この手に、この腕の中に。
そして、いつもみたいに、俺が気絶してしまうくらい、抱きしめて、抱きつづけていて欲しい。
今でもたまに、耳元で囁く声が聞こえるんだ。
『俺はここにいるから。お前は前だけを見ていればいいから』
もういないのに。振り返っても、姿形がないのに。
聞こえるんだ。あいつの口癖が。
早く、あいつの元へ行きたい。
地獄に落ちてもかまわない。そばにいられるなら、そこがどこだって。
でも、だから、自殺なんて出来ないんだ。
自殺は禁忌だ。本当に、地獄に落ちる。
あいつはきっと、天国に昇っただろうから。違うところには行きたくないから。
いつになったら、そばに行けるんだろう。
俺の今の望みは、それだけなのに。

来実
彼を好きになってどれくらい経つだろう。
同性を好きになってしまう性癖に気づいたのが中学生で、彼に出会って一目惚れして。
あれからずっと、彼一筋で生きてきた。
彼のために何かをするのが嬉しくて。
3年で医大卒業できたときは、さすがに自分でも驚いた。
中退するつもりだったからね。ホント、運がいい。
それも、彼のため、って思って頑張ったからなんだ。
体質的に無理の利かない人だから、サポートしてあげなきゃ、って。
その間に、向こうで彼氏ができたんだ。帰国まで、って制限付きで。
セフレだったんだけど、一人限定だったから、彼氏でいいんじゃない?
その元彼から、こないだエアメールが来てた。アメリカに戻ってこないか、って。
田舎町に診療所を開いたんだって。手伝ってくれないか、ってお誘い。
受けようと思う。
最近、彼のそばにいるのが辛いんだ。一緒に住んでてエッチもする仲だから、余計辛い。
だから、一緒に住むの、反対したのに。
でも、離れたくない。彼のそばにいたい。
せっかく信頼してくれてるのに、自分からそれを裏切らなきゃならないなんて、そんなの辛すぎる。
ホントは俺って、どうするのが一番正しいのかな?

高宏
これは貢も知らないことだけど、昔は結構車乗り回していた方なんだ。
宏紀にも落ち着いてるなんて言われるけれど、それはただ単に表に本性が出ないだけの話で。
抱かれてるときの俺なんて、見たらびっくりするだろうなぁ。
貢にしか見せる気はないけど。
結構内面激しいのよ、俺。
なにしろ、ノーマルでしかも結婚していた貢をその気にさせちゃったくらいだからね。
偉いでしょ、俺。自分の欲求には頑張るんだよ。仕事は適当だけど。
あ、その辺も貢しか知らないかも。
そうか、貢しか知らないこと、結構あるなぁ。
俺って案外秘密主義なのかなぁ?貢も人のことはあまり他人に言わないしね。
いい加減、宏紀と忠等にはばらしておいてもいいのかもしれない。
タイミング見つけよう。うん。決定。

400年という期間は、一口で言うと確かに長い気もするけれど、その間生きている俺たちにとっては、まだまだ足りない短い期間。
とはいえ、年取って死んでまた生まれての繰り返しは、ちょびっとの罪悪感も手伝って、毎回後悔する。だからといって、生まれちゃったら元の持ち主には返せないからね、生きるしかないし。
今生に入って、なんと、彼女ができた。
今までは「まつ」に義理立ててたんだけど、本人いないしさ。とっくに成仏しちゃって。
彼女も同じ、一度は死んだ人間で、前までは男性だった。
今は、女の子。まだ中学生だが、身体自体が早熟なのか、魂が大人だから影響を受けたのか、すごく色っぽい奴で、そんなのは抜きにしても俺に惚れさせるには十分の相手。
付き合い始めた当初は、さすがにロリータ趣味はないから、手は出さなかったけど、何しろあの時確かまだ小学生だったし、今では身体も含めて愛し合っている仲だ。
周りには、来年あたり結婚しちゃったら、なんて言われている。
でもなぁ、さすがに高校卒業までは待たないとまずいでしょ。
俺も、彼女を養っていけるだけの甲斐性、まだないからね。今独立目指して修行中の身だから。
でも、ゆくゆくは結婚したいと考えている。彼女にはまだ話してはいないが、きっと承知してくれるだろう。
そうして、平々凡々な生活に戻って、そのまま今生で一生を終わりにしてしまえたら、それが理想。
現実そううまくいくかは分からないけれど、やるだけやるつもりではいる。頑張るよ、俺。

セラ
家族の話。
知ってのとおり、双子の兄と妹二人、両親、伯父が一人。これが俺の近しい家族構成。
伯父さん、王様のくせに後継ぎ作らないから。ちょっと前までは俺に白羽の矢が立ってた。
逃げたけどね(笑)
父親は終身刑で座敷牢暮らしだ。もう二度と出てくんな、って思う。
母親は、父親がいなくなったのをいいことに、趣味三昧だ。
園芸趣味だから、そんなにお金もかからないし、全然かまわないよ、と、家の当主を継いだ兄が言っていた。
その兄は、俺が逃げたせいで、ロッテンブルク公爵家を継がされた。
まぁ、俺が逃げなきゃ順番を俺に越されてたわけで、ちょうどいいんじゃないかな。
妹たちは、二人揃ってそちらも双子の伯爵家の御曹司に言い寄られているらしい。
伯爵家ならいいんじゃないの?と無責任に言ったら、どうやら性格が甘えん坊でママコンなんだそうだ。
俺に似て、二人とも性格きついからね。そりゃ、結婚しても3日もたないだろう。
伯父さんは、相変わらず国民に愛される王様業に勤しんでいる。
案外楽しんでいるらしい。ま、王様の才能は十分な人だから、死ぬまでそのまま続けられるだろうね。
続けられないなら俺にクーデター起こされるし?(苦笑)
で、俺はと言えば、国を離れて滅茶苦茶自由を楽しんでる。
恋人はそばにいるし、信頼できるボスと仲間たちが周りにいるし。
俺、逃げてきて大正解だと思うよ。
これで戦いの中で死ぬことになっても、それも本望ってもんだ。
だから、命預けちゃうからね、レディ(はーと)

志之武
前世を思い出したのは、確か幼稚園の頃だったと思う。
普通、前世なんて覚えている人はいないだろう。
俺も、彼に再会するまでは、すっきり忘れていたんだ。
でも。
あの人を愛してるのは、生まれ変わっても変わらなかった。
好きなんだ。この世の誰よりも。
何を引き換えにしても、ずっとそばにいたい。
だから、あの時は見かけただけでも嬉しかった。
あの頃の、そのままだったら、きっと彼を探しに行っている。
今は、そんなこと、怖くてできない。
好きだから、知られたくない。
男の、しかも父親の、慰み者になってるなんて。そんなこと。
ねぇ、せいさん。俺は、どうしたらいいの?
貴方に会いたいのに……昔のように、愛してほしいのに……

太郎
いや、ホントはね。旦那のこと傀儡にするつもりで近づいたはずなんだよ。
何でこんなに惚れちゃったのかねぇ。自分でも不思議。
まぁ、今までにはなかったタイプなのは確かだよね。
ひねてて拗ねててかなり単純で、でも、案外考えるところは考えてて。
俺でも気づかないようなこと平気で指摘してくるし。
あれが、努力で培われた、本物の実力なんだろうねぇ。
俺なんて、努力、したことないから。そんなことが耐えられる精神力が羨ましい。
あぁ、そうか。羨ましいなんて思っちゃったから、惚れたんだ。きっと。
良い男だよ。自分の目を誉めてやりたい。
俺が、その足元にひざまずくのを良しとできる相手は、きっと生涯あいつ一人なんだろうな。

千也
兄のことを男として見るようになって、僕はかなり自分の価値観が変わったと思う。
そもそも、僕は男なんだけど、なんで兄にこんなに惹かれてしまうのか。
それも、抱いてほしい、なんて、男としてはちょっと情けない。
周りの男たちには、そんな風には思わないのにね。むしろ、気持ち悪い。
でも。兄だけは、別。
自分がおかしくなってるのは自覚してる。だから、兄には知られないように、結構必死。
親友には逆に、惚れられてる。
でも、それは、若いうちの暴走なんだ、だって。本人がそう言ってるんだから、襲われる心配はなさそう。
それと、僕が兄にそんな気持ちを抱いてるのを知ってるから、精神的にも助けてくれる。
嬉しいし、でも、ちょっと申し訳ないかな。
最近、自分の欲望が暴走気味で、ちょっと怖い。
兄に、色目使ってたりしないといいんだけど。
なんていいながら、無理やりでも抱いてほしい、なんて思ってるのも事実。
どうしたらいいんだろう、僕は。
このまま、じっと耐えるしかないんだろうなぁ。相手が兄弟じゃ、逃げられないもんね。

セイキ
レディと知り合って、早2年数ヶ月。
天才だなんだと持て囃された俺でも、あの人にはホント、勝てないなぁ、と思い知る。
一国の正規軍で准将の地位まで上り詰めた俺が、だよ。
レディには勝てない。
まぁ、勝とうとも思わないよ。
レディには恩があるしね。
それに、俺は自分が立つより、人に立たせて裏で小細工するタイプだから。
良い意味で言えば参謀、悪い意味で言えば黒幕?
今日なんかも、レディの凄さを再認識してしまった。
何たって、あの大艦隊と対等に渡り合って、しかも追い返しちゃったってんだから。
常識で考えたら、無謀だよ、そんなこと。でも、この海賊団なら可能。天才多いから。
それを、レディは知ってる。そして、自信を持って俺たち天才集団をこき使ってくれる。
遠慮しないからいっそ小気味良いくらいだ。
人を使うのがうまいんだよ、レディは。
自分の手駒を把握して、使い分けてる。だから、自分の手駒で勝てないと思ったら、戦になる前に早々に手を引く。
引き際の良さも、天才的だよな。
こっちの都合で見れば「逃げ」であっても、向こうから見れば「一歩引いた」に見える。
そういうタイミングを、うまくつかむのがレディの才能。
これは、真似できないよ、誰も。
ホント、良い人に出会ったよなぁ。心底そう思う。
もう、俺、レディになら命預けられるもんね。
信頼してるよ、ボス。

則子
私がソロで活動し始めて、1年経った。
高校も卒業したから、仕事一本で専念できて、途端にテレビの仕事が増えちゃったんだけど。
シゲちゃんが大学に受かったって聞いたから、ちょっと一安心。
そのための活動休止だもんね。このままストレートで卒業してもらわなくちゃ。
それまでは、みんなバラバラ。
蛍ちゃんは、システムエンジニアになるんだ、って言って、専門学校に行っちゃった。
たっちゃんは、実家の仕事を手伝ってる。ビールケース運ぶから腕力がついたよ、なんて言ってた。
シゲちゃんとたっちゃんは、あいかわらず仲良くやってるみたい。
そりゃ、たっちゃんは元彼だし、実は今でも好きなんだけどね。
でも、たっちゃんの過去は、私には重すぎたのよね。助けてあげられなかった。
だから、シゲちゃんに譲ったの。
シゲちゃんの傷と、たっちゃんの傷。
お互いに支えあっていけるから。助け合えるから。
それがわかっちゃったんだもの。身を引くしかないじゃない。
でもね、そのことで引け目でもあるのかなぁ? それとも、二人とも紳士なだけかしら。
優しいのよ。二人とも。大事にしてくれるの。うれしいわ。
私たちって、この関係がベストだったのかもしれない。
そりゃ、男同士だしね。バンドなんかやってて、シゲちゃんが大学から出てきたらプロに返り咲きの予定だから、ワイドショーとかの格好のネタになるのかもしれないけど。
大変になっちゃったら、私が助けてあげるからね。お二人さん。

孫吉
うちで世話になってる長屋に、一年前、その二人が越してきた。
それ以前は、爺が一人でやってた小間物屋を、越してきた二人連れの片方が継いだわけだが、これが今や近所でも評判の店になっている。
と言ったって、おいらは別にその店に厄介になったこたぁないがね。
女房のおはるは毎日顔を出す常連だそうだ。
それにしても、おかしな二人連れだ。
一方は浪人で一方は元修行僧ってんだから、一体どこで知り合ったんだ?ってぇくれぇの異様な組み合わせだよ。
これが、実は夫婦らしい。男同士だぜ、普通ならその事実がバレた時点で村八分だろ。
ところが、どっこい。
この二人に限っちゃぁ、長屋中が認めるおしどり夫婦だ。
長屋の男衆は「志之助さんの細っこい身体じゃあ、無理させたら壊れっちまわねぇか」なんて中村の旦那をからかうくらいだし、長屋の女衆は「そろそろ子供がほしい頃じゃないかい? あたしが代りに産んであげようか」なんて冗談を言ってやがる。
それが、自然なんだ。あの二人は。
多分、志之助さんの美貌のせいなんだろうねぇ。気持ち悪いと思ったことがない。
おかしいのはわかっちゃいるんだぜ。でも、別に不気味じゃねぇんだ。
隣のクマさんとこじゃぁ、毎晩あの二人の情事を聞いてたらこっちまで煽られた、とか言って、女房の腹にガキこさえちまったってんだから、てぇしたもんだ。
気持ち悪かねぇのか、って聞いてみたら、最初の一回だけな、とか言って笑ってやがった。
いや、まったく、不思議な夫婦だよ、ホントに。

歳さんが亡くなって、もう半世紀が経ちました。
私ももういい年なのですが、未だに老いというものを感じることができずにいます。
これで、あの人が知り合いにいなければ、きっととっくに発狂していたでしょう。
あの人と同じ体質で、霊感の強い彼は前世を知っているのですが、その前世でも同じ体質を持っていたらしく、彼は困ったように笑っていました。
彼が、自分の体質に笑って見せるだけの余裕を持っていてくれたから、今でも生きています。
生きる目的もなく、ただ獣のように生を貪っていた私を拾ってくれた藤堂さんも、数年前にこの世を去りました。
ずっと、私の行く末だけを心配してくださって、とても感謝しています。
確かに、藤堂さんは、私にとって、恋人の仇です。
でも、反対に言えば、恋人を楽にしてくれた恩人でもあるのです。
どうせ、あの時勢では助かる望みなどなかったのですから。
私が、こうして歳もとれずに生き長らえているのは、歳さんのせいなのだそうです。
あの人の、死に際の一念が、病に伏して虫の息だった私を、ここまで生き長らえさせたのだと、藤堂さんが言っていました。
きっと、そうなのでしょう。
あの時から、ずっと、歳さんがそばについている気がして、だから死ねなかった。
今までだって、何度も自殺しようかと考えたけれど。
でも。
それも、ここまでのようです。
あの時の病が再発しました。
私ももうすぐ齢八十を迎えます。この辺りが限界でしょう。
今まで私を支えてくれた、同じ体質を抱えて苦しんでいるあの人を置いて逝くのは、忍びないのですが。
ねぇ、歳さん。もういいでしょう? 私は、もう、自分の寿命をちゃんと生きたと思いますよ。
ね、もういいでしょう? 貴方のそばへ行っても……

沙羅々
俺の周りの人って、みんなすごいと思う。
なんでこんなに友人に恵まれたのか、いまさら不思議に思えるくらい。
恋人のフレッドはドイツ人で、実家はなんと、お城。昔は貴族なんだそうで、今でもバリバリ稼いでいる実業家だ。
本人は、日本語ペラペラで、書誌学図書館学の専門家。大学の講師をしている。
それとは別に、書評家としての顔も最近持ち始めた。
俺とフレッドの共通の友人で、親友と呼べる人が二人いる。
一人は高志久美くん。こんな名前でもちゃんと男の子で、ひさよし、と読む。本人も認めているクミちゃんだけどね。
彼は、世界的にも有名な元天才ハッカー。最近は、クラッキング撲滅運動実施中で、ファイアーウォールの開発で本職の人を手伝っている。
ただ、いろいろな相手と仲良くなっちゃったおかげで、就職難だそうだ。能力があるから、余計もったいないと思う。
彼の彼氏(微妙な言い回しだな)は、これまた大学講師。こないだ助教授になったばかりの若い先生だけど、実力は折り紙付きで、日本の第一人者だ。
なんでも、久美ちゃんに自慢のセキュリティを軽く突破されて、惚れ込んだらしい。
今でもそうだけど、久美ちゃんのハンドルはKumiだから、その当時、女の子だと思い込んでいたそうで。
男と知って百年の恋も冷めるかと思いきや、なんと遠縁の親戚だそうな彼に、さらにのめり込んだのだそうだ。
素質、あったんだろうなぁ。普通、嫌だよね。
そんな彼らに囲まれて、俺も、何か誇れるものを探してる。
確かに、俺だって、小説家として世間一般に物を残す仕事をしているけれど、書いているジャンルのせいなのか、ベストセラーになるほどのものは書いていないし、文学賞にも縁がない。
仕事をしたての頃は、そんなものはいらないと思ってた。
でも、今は、何か証拠に残るものがほしいと思う。
彼らの存在に負けたくない。俺だってここにいるんだって、そう世間に思い知らせてやりたい。
確かに、贅沢な望みだ。自分の力量から言っても、かなりの高望みだと思う。それは、わかってる。
ちょっと焦ってるのかもしれない。
自分は、いつまでこの仕事をしていけるのか。10年後、自分は何をしているのか。
そう考えると、自信がないから。社会的地位が、ほとんどない仕事だから、余計そう思う。
今は、でも、仕事が忙しくて、俺一人の手では他のことなんて見てられなくて、どうにもしようもないんだけど。
なにかしなくちゃ。そう思うんだ。
3人とも、俺が一番地に足が着いてる、ってべた褒めしてくれるんだけど、それってやっぱり、身内の欲目ってあるしね。
なんだか、漠然と不安なんだ。
困ったな。ただの鬱病だったりしてね。それはそれで、困っちゃうけど。

氏秀
家族の話をしようと思う。
妻は裕香。前世のしがらみも何もない、れっきとした現代人だ。
俺には勿体ない人なのだが、俺は心底惚れている。この子のためなら何でも出来るぞ、俺は。
息子は虎。生後10ヶ月。最近立って歩くことを覚えた。
めちゃくちゃ可愛い。もう、俺、親バカになりそう。
義弟は正己くん。ちゃんと現代人だが、俺と同じ世界に生きる人だ。
前世のしがらみに引き回され、自らそれを受け入れ、戦っている。強い人だと思う。
さすが、歴史に名を残す人は、肝の据わり方が尋常じゃない。俺には真似できない。
正己くんの恋人は、前世からの運命の相手。順くん。
彼も、現代人だけど、この世界で生きている。霊力がない人だから、結構必死らしい。
俺たちが生きている世界は、霊の世界だ。
戦国時代に生きた武将たちが、死んでもなお、この世の覇権を争っている。
バカみたいだと思う。もし、頂点に立てたとして、どうするつもりなのか。
霊なのに。
そんな世界から抜け出そうとしない俺も俺だけど。
家族のこととか、生前の実家のこととか、その世界にいる友人たちとか。
みんなのことを考えると、自分だけ無責任に逃げ出すことができない。
俺の周りはみんなそうだ。自分の野望のためじゃなくて、他人のためにこの世に残っている。
人は、一つ欲を満たすと次の欲を持ち、一つ問題を解決すると次の問題が発生し、それを繰り返して生きている。
それは、霊も同じだ。無限ループにはまっている。
その繰り返しに終止符を打てるのは『死』のみだ。
では、死を持たない我々霊は、一体いつ終わりを迎えられるのだろう。
いつになったら、このループを抜けても良いのだろう。
これは、この世界に生きる俺たち霊の永遠のテーマなのかもしれない。

久美
最近、悩んでいる。
何って、今後の俺の進路。もう大学3年だし。そろそろ焦ってくる頃。
下手にプログラムとかできると、困っちゃうんだよ。SEになる気はないし。
全然違う職種にしようかな。デザイン関係とか、思い切って営業とか。
いや、そうするとN社の松坂さんとK社の磯崎さんとD社の大道寺さんと……に叱られるかも。
って、どうしたらいいのよ、俺。
いっそ彼氏見習って、研究職に進むか? でもなぁ、大学講師って柄じゃないんだよなぁ。
ほら、俺って、周りの人みんな、サラリーマンじゃないからさ。
大学講師が二人、小説家が一人。あとは俺と同列の大学生。相談相手にならないわけよ。
そもそも、サラリーマン目指すとして、N社とK社とD社とH社とY社とO社とS社はダメな訳じゃん。
どこに就職するにしても、他との関係を裏切ることになるんだからさ。
この業界の大手、全滅なのだよ。どうしろってのさ。
……いや、そもそも、この業界のどっかの会社員になった時点で、他みんな裏切るのか。
残った選択肢が……困るよなぁ。
違う職種探すか、自分でベンチャー起こすか、なんだもん。
外資は無茶だし。俺、英語大っ嫌いだから。
っていうか、外資だってD社とM社とS社はダメじゃん。M社にいたっては、日本支社長と知り合いよ、俺。
民間の研究機関、コンサル会社って手もあるか。
でも、今まで飲み代お茶代で手を打ってた分、契約、って形になるのは申し訳ない気もするし。
あ〜、もう、俺は一体、どうしたらいいんだぁ!

日光菩薩
観世音様が如来に昇格して、もう1ヶ月が経ちます。
観世音様にお変わりはありません。それはそうでしょう、御仕事が変わらないですからね。
観世音様は、本当に不思議な方です。
ご自身は、私から拝見していても、心を病まれて大変なご様子なのに、それでも他の者に対して優しさと慈しみを忘れず接してくださいます。
そして、皆を大変幸せな気持ちにしてくださるのです。
私には真似ることもできません。
あんなに御気の毒な方なのに、とてもそうは見えなくて。
すごい方なんです。そして、やはり不思議な方です。
尊敬しています。心の底から。これは、私の立場上あるまじきことですが、もしかしたら私が御仕えしている薬師如来様よりも、尊敬しているかもしれません。
それは、きっと、元は同じ人間だから、1ヶ月前までは私と同じ立場だったから、といったことが理由なのかもしれませんが。
弥勒菩薩の一件は、私もとても不安でした。
もしかして、この世から観世音様がいなくなるかもしれない、そう思うと、いてもたってもいられませんでした。
月光も同じ気持ちだと知ったときは、嬉しかった。
組み紐をお贈りしようと言い出したのは月光の方でしたが、私も何かをしたかったのは同じで、具体的な提案をもらって助かりました。
それがなかったら、何かしたいのに何もできなくて、自分の中で悶々としていたのでしょうね。
そうそう。
月光とは、今までに増して仲が良くなりました。
薬師如来様とも、以前とは比べ物にならないほど、お心がわかるようになりました。
以心伝心というのでしょうか。
私たち3人は、あの事件をきっかけに、かなり仲良くなったと思います。
今後も今の打ち解けた関係を続けていきたいものです。

アラミス
私には、今年21になる弟がいる。
名はレディ。
この太陽系宇宙を脅かす海賊のボスに君臨する男だ。
どんなマフィアのドンも、宇宙でこいつの前に立ちふさがるような危険なマネはしない。
というと、かなり屈強そうなイメージが浮かぶだろうが、本人は吹けば飛びそうな優男だ。
ただし、頭が切れる。これは、兄の欲目を抜きにしても、やはり頭が切れる奴だ。
大体、それぞれ弱小だったとはいえ、海賊団を3つ寄せ集めて、何の問題もなく今まで順調に成長してきたのだから、相当なものだ。
あそこの海賊団はとにかく、とんでもない逸材の集まりで、私としては、非常にもったいないと常々思っている。
首脳格の面々にいたっては、それぞれに「太陽系一の○○の天才」と肩書きをつけてやりたくなる実力の持ち主なのだ。
さらに、下っ端にいたるまで、全員が軍隊経験者で、最終階級が一番下で伍長。平均年齢は30そこそこ。
上は、さすがに首脳格に列してはいるが、最高階級「准将」である。そこに至った当時、まだ21歳だったというから、とんでもない話だ。私だってまだ佐官だぞ。
はっきり、もったいないと思う。
ここがミソなのだが、全員が軍隊経験者なのだ。
何で手放したんだろう、それぞれの軍司令部は。はなはだ疑問である。
……あ、いや、一人違う子がいたな。大卒のエリート、16歳。彼は、軍隊経験はない。あるわけもない。王族のかなりの上位クラスだ。
我がミュラン家も貴族に列する家柄を持つが、彼はまったく別格。何しろ、現王の甥御だから。
何で海賊になんて入ったんだろう。不思議で仕方がない。
とにかく、つくづくおかしい集団だと思う。
全員そろって我がトリトン星帝国軍に来てくれないだろうか、と密かに思っているのだが、おそらく拒否されるのだろう。
もう軍隊はこりごりなのだそうだから。
……はぁ。もったいない話だ。

松之助
深雪が甲斐へ行ってしまって、もうずいぶん経つ。
今年、何年目だろうか。
俺たちの師匠、小太郎様が、つい先日病に倒れられた。
もうお年だから、現役復帰はないだろう。それは御館様もご承知の上で、後継ぎに俺を指名された。
そんな面倒くさいことは嫌なので、俺は小太郎様に了解をもらって、この風馬の統治を合議制に切り替えた。
一応、代表だけは引き受けたがね。それ以上する気はないよ。
山のみんなは、もう深雪のことは忘れてしまったのだろう。
挨拶もなく音沙汰がなくなるのは、この商売、決して珍しいことではなくて、そんな相手をずっと考えているのは心に隙ができるから、忘れられるように自らを訓練しているのだ。
で、俺はというと、深雪が山から消えた理由を知っているから、忘れられるはずもなく。
早く戻ってきてほしいと思う。
あいつがいないと、どうも調子が出ない。
……でも。
いつまでも帰ってこないと良い、そう思っている自分もここにいる。
あいつが悲しむところを見たくない。
帰ってきたら、確実に、泣くから。いくら強いって言ったって、これは、無理だから。
俺だって、あの当時、思っても見なかった。
まさか、あの喜平さんが、病で死ぬことになるなんて。
喜平さんっていう恋人がいたから、あれだけ頑張って来れたんだ。俺でも勝てないくらい、強くなれたんだ。
その人が、帰ってきたらもう死んでるなんて。
俺なら絶対耐えられない。
ただの友人の俺でさえ、喜平さんが死んで明日は三回忌なのに、未だに信じられないのに。
深雪は、いったいどうなっちゃうんだろう。
そりゃ、俺はできる限りあいつの力になってやりたいし、そのつもりだけれど。
そんなもので、あいつが平常心を保っていられるのか。俺にはそれだけの影響力はあるのか。
情けない話だけど、無理だと思う。
俺では、あいつを支えてやれない。あいつの抱える闇は大きすぎて。あの当時でさえ難しかったのに。
兄君である氏邦様と氏規様と俺と、力を合わせれば、なんとか後追い自殺くらいは止められるだろうけど。
あいつが荒れたら、俺だって手がつけられないぞ。大きくなってるんだろうしなぁ。
俺はいったい、どうしたらいいんだ……

宏春
テツと出会って、もうかなり経つ。
最初は、その活発さと体力と行動力と、とにかく羨ましかった。
自分は本当に、息を切らすような行動は何一つできないから、尚更羨ましくて仕方がなかった。
友也も確かにそうなんだけど、友也にはそんな感情は抱かなかったな。
剣道やってるからいつも屋内なせいかもしれない。
テツは、俺とであった頃からサッカーに夢中で、しかも結構強かった。
俺は、それを羨ましそうに見てるだけ。
昼休みも放課後も、テツはサッカーボール片手に運動場。俺は一人、教室で留守番。
その、関係ともいえない関係が崩れたのは、テツが差し出してくれた手のせいだった。
いつものように昼休み、サッカーボールを片手に教室を出て行こうとしていた彼が、俺に手招きをしてこう言ったんだ。
「たまには見に来いよ。太陽に当たってるだけでも違うぞ」
びっくりしたんだ。本当に。
俺のことを、まさか気にかけてくれてるとは思ってなかったから。
それから、俺はテツに引きづられるように、行動を共にした。
まだ小学生だったから、とても不器用だったけれど、俺の身体を自然に心配してくれて、かばってくれて、引き回してくれたんだ。
俺がこんな明るい性格になったのは、多分、テツに見合うだけの自分になろうと努力したせい。
身体はどうやったって無理だから、身体の必要ないところで、ちゃんと前に行ってやりたかった。
自分だってテツを引き回してやりたかったんだ。
いつのまにか、それが恋に変わってた。
思春期って恐ろしいと思う。俺たちって、ホントに、きっかけが必要だっただけで、赤い糸で結ばれてたんだ。
いまや相思相愛のバカップルやってる。そんなこと、出会った頃には想像すらできなかったのにね。
きっと、一生付き合っていけると思うんだ。
今までいろいろあったけど。あったからこそ、俺には自信みたいなものがちゃんとある。
俺とテツは、結局、欠点をぴったり補い合える、パズルのピースだったんだ。
だから、絶対。
助け合って生きていこうね、テツ。

美美
あの二人は、とにかく常識はずれだと思うのよ。
まったくどうしようもない奴だと思ってた幼馴染の優貴がよっぽど常識人に見えるわ。
まぁ、あの二人に出会ってから、かなり見直したっていうのもあるんだけど。
だいたいねぇ、天使だとか竜の王様だとか、物語の中だけの話じゃないわけ?
まして、何で堕天使と竜の王が恋人同士なのよ。
絶対おかしい。
それも、男同士よ。
そりゃ、船津が久美ちゃんに惚れてるのは会ったときから知ってたけどさ。
いくらなんでもくっつくとは思ってなかったのよ、私だって。
それが何? 昔からの恋人? 事情があって記憶がなかっただけ?
まったく、どうしてこうなっちゃったのかしら。
そもそも、魔法使いになって冒険のたびに出た時点でいけなかったのかも知れないわ。
あぁ、神様。
できることでしたら、冒険に出る前まで時間を戻してください。
そして、あの二人を最初っから恋人同士にしておいてください。
そうしたら、私だって慣れちゃうのに。
もう、どうしたらいいのよ、私って。
だって、あの二人、その立場上って言うのもあるんだけど、凄く強いんだもん。
もう、離れられないわよ〜。
どうしてくれるのよ! もう。
優貴のバカっ!!(八つ当たり)

邦郎
さすがの俺も、いくらなんでも初体験を男とすることになるとは思わなかったよ。
好きな相手だから大満足なんだが、それはそれ、これはこれ、一人の男として、間違ってるだろう。
って、時々は思う。
ワイドショーや女性週刊誌では、実にたくさんの有名女性タレント(女優)との噂をでっち上げられたが、この俺が、その当時まだ童貞だったとは、誰一人として知らないに違いない。
俺がそうなのにね、千晴はちゃんと童貞卒業してんだよ。
こないだそれを知ったときは、さすがにショックだったね。
しかも、それ、中2の時だって。
うらやましい。
俺だって、中2の頃はまだ、小さい劇団でたまに子役させてもらうだけの一般人だったんだから、あっても良いのに。
ないんだよねぇ。はぁ。一回くらいは女性とヤッてみたい。
とかなんとか言ったら、千晴の奴、「やってみたらいいじゃない。浮気くらいなら全然気にしないよ?」だって。
それはそれで、なんかむかつくぞ。
気にしてくれよ。
俺の知らない知り合いに会っただけで嫉妬するのは、俺だけかよ。
なんか悔しいぞ。千晴、余裕ありすぎ。
何でそんなに人生達観してるんだよ。歳、サバ読んでるだろ、お前。
とか思っちゃう俺って、やっぱり大人気ないかもしれない……。
はぁ。先行き不安だ。

吉良
幸せだなぁ、ってつくづく思う。
1年前には考えられなかった生活をしてる。
彼氏がいつもそばにいて、彼のお父様にも可愛がられて、他の男に抱かれることもなくて、ちゃんと仕事してる。
こんな身体なのに。
いい人に巡り合えたこと、神様に感謝してる。
神様とは対極にいる身の上だけど。
そうそう。
先日、実の両親に会うことができたんだ。それも、彼のおかげで。
母は日本人で、それは名前を見ればわかるから驚かなかったけど、吉野というところで旅館の若女将をしている人だった。
父は、本当はこの世界の人ではなくて、う〜ん、悪魔? そういう属性の人。
母は日本人の旦那さんと結婚していたんだけど、父に見初められて、父の子供を産んだ。
そのせいで旦那さんと別れることになって、しかも僕は旦那さんに取り上げられて捨てられたんだって。
僕は施設の出だから、養母のマリアにそういう経緯は聞いてたけど、まさか人間じゃないとはねぇ。
そりゃ、超能力持ちだし、2年に1歳しか年取れないし、わからなくもないんだけどさ。
ちょっとショックだった。
でもね、今は直樹がそばにいる。
しばらくは、一緒にいてくれると思う。
父は、もうしばらくしたら迎えに来れるから、それまでは人間界で頑張ってくれ、って言ってた。
魔界の王子様なんだって。
ただ、お家騒動でどたばたしてるからもうちょっと待ってほしいって。
今は子供だから、2年に1歳年を取るけど、大人になったら本当に年を取らなくなるから、人間界にはいられないらしい。
直樹と別れるのは辛いから、自然に別れるまでか、直樹が年取って死ぬまでは一緒にいたい。
そうは言っても、年を取らないのは不自然だから、ずっとは難しいんだけど。
そういうことはまだまだ先の話。
現実味を帯びてきたら、また考えるんだ。
今は、今のままで良い。すごく幸せだから。

おつね
中村屋の志之助さん、やっぱ、すごい人よねぇ。
元々は比叡山の修行僧だったんだけど、江戸に来て、中村殿に出会って、やめっちゃったんですって。
でも、やめて正解よ。
志之助さんはお坊さんに納まっておくような、器量の狭い人じゃないもの。
もっともっと大舞台に立って、常識はずれのすごいことをいっぱいやってほしいわ。
見てて楽しいのよねぇ。
ほら、修行僧といったって法力僧としてはずば抜けた能力を持ってた志之助さんは、とにかくいろんなことができるから。
天狗や龍とはお友達みたいだし、空飛ぶし、海潜るし。
そうそう。
ついこないだ、とうとう私も空を飛んだの。
天狗の「一つ」さんに乗せてもらって。
気持ちよかった〜。いいなぁ。空。

まだまだ私も、志之助さんや中村殿ともっと仲良くなって、いろんな経験させてもらうんだ。
次は何が起こるかな。今から楽しみだわっ。

克等
昨日、松実と喧嘩をした。
多分、付き合い始めて初めてだ。
きっかけは些細なことだった。
なんだったかな。そうそう、俺が松実の学友に嫉妬したのが原因。
だって、仲良さそうなんだもんさ。女の子だったし。
不安になるじゃん。
でも、松実に言わせると、そんなに信用してないの?ということになるらしい。
それ、俺も言わせてもらいたいよ、ホントに。
松実だって、案外嫉妬深いし。しかも、自分の中でみんな抱えちゃうし。
そりゃぁね、兄貴とヒロの仲には程遠いかもしれないけど、俺だって人並みには愛してるんだぞ。
いい加減、自信もってくれても良いんじゃないの?
愛してるから、不安なんだよ。
人の心なんてわかんないんだから。
男同士なんて、不安定だからね。先が約束されてないんだから。
知らないところで異性の親しい友人作られたら、不安になるじゃん。
お互い、元々はノーマルなんだから。
松実は赤面症だからっていうのもあるけど、なかなか近い友人を作らない奴だから尚更。
俺、いつまであいつと付き合っていられるんだろうなぁ、なんて思っちゃう。
あ〜ぁ。
兄貴に相談してみようかなぁ。
……無駄だな。あの二人に俺の悩みを理解しろという方が間違ってる。
しょうがない。
今夜あたり謝って、仲直りしよう。

年上の彼氏を持つと、かなり楽チンだ、と思う今日この頃。
いろんなところに連れてってくれるし、いろんなことさせてくれるし、甘えさせてくれるし。
で、それだけじゃなくて、ちゃんと僕にも甘えてくれるんだ。うふふっ。
てか、彼氏が兄貴と大親友なおかげで、両親に内緒で一緒に暮らしてるんだけどね。
そもそも、彼氏ってば、使う当てのないお金がいっぱいあるお金持ちだし。
えっと、まあ、それはうちもね、名古屋で地元有数の大会社社長のうちなので、僕だってブルジョワな生活は慣れてるんだけど。
彼氏はそれに2,3個輪をかけて金持ちなんだ。
そもそも、東京の一等地にオフィスビル2棟、南千住に賃貸マンション3棟持ってるって時点で、本人働かなくても良いでしょ、って感じなんだけど。
それでも、どうやら働くのは好きみたいで、暇さえあればバイトに出かける。
それはまあ、平日の昼間は僕も学校があっていないしね。いいんだけど。
そんなことしなくても、今の貯金だけで、優に100年は普通に暮らせちゃうと思うんだけどなぁ。
はぁ。うらやましい。
でもね、そのお金って、彼氏が僕に出会うつい最近まで、自分の体質のことで苦しんで苦しんで、その過程でいつのまにかできていたお金だから、彼にはあまり実感がないんだ。
そして、僕にとっても、それは彼氏のお金だから、別にどうでも良いかな、って思う。
今は実家からの仕送りで生活してるし、彼氏は彼氏で、バイトしてるお金で生活してるし。
って、あれ? あの貯金、手付かず?
すご〜い。……やっぱもったいないかも。
使って流通させてやった方が良いんじゃないのかなぁ。
大きなお世話か。うん、まぁ、いいや。
そんなわけで、僕は今、かなり幸せです(まる)
……ん? 結論になってないぞ?

麻紀/隆則
 <麻紀>
俺に恋人ができるなんて、つい数ヶ月前まで、考えたこともなかった。
俺はずっと、男たちの慰み者になって生活してきたのに、そんな俺を受け入れて、好きだ、って言ってくれた。
俺でさえ、こんな自分は嫌なのに、彼はこんなにいろいろな男にオモチャにされてきたこの身体を、きれいだ、って言ってくれる。
嬉しいんだ。俺を俺として見てくれるから。
でも、同時にすごく不安になる。
いつ捨てられてもおかしくない身体だから。
ホントに、俺を好いてくれてるのはわかるし、嬉しいんだけど。
でも、ほら、俺と彼では男同士だし、血もつながってるし、元々彼はノーマルの人だし。
いつ他に好きな人ができるかわからない。
きっと、女の子を好きになったら、俺なんてやっぱり、不特定多数の男たちの慰み者になってた汚い身体だから、そこが目に付いてくると思うし。
それって、気になったらもう、元には戻れないだろうから。
……彼に、出会わなければ良かったのかな。
そしたら、こんなに不安にもならなかったのに。
でも、彼に出会わなかったら、いつまでもあのままで、こんな幸せを知ることもなくて。
それは嫌だよなぁ。
やっぱり、彼に出会って良かったんだ。
だから、彼が好きでいてくれる今のうちに、自分も強くなっておかなくちゃ。
いつ別れ話を持ちかけられても大丈夫なように。
……できるかなぁ。自信ないよ……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 <隆則>
あいかわらず、マキは気の弱いことばかり言ってるが、俺のことが本当に好きなのなら、もうちょっと自信もってくれても良いのにな。
マキは本当にすごい奴なんだ。
俺をこんなに好きになってくれるなんて、俺にしてみれば光栄なくらい。
頭は良いし(慶応に推薦で入っちゃうくらいだ)、すでにプロのイラストレーターだし、昔は大騒ぎされたインディーズバンドのボーカルで、いまだにネットの上では大人気だし。
天は二物を与えず、なんて、嘘だと思う。
そりゃ、今までの人生は悲惨続きで、他人でしかない俺には同情するしかできなくて、それはマキ自身が乗り越えなきゃいけないことだから、手も貸してあげられないのだけれど。
でも、マキの過去のことを理由にして俺がマキを振ることは万に一つもないってこと、いい加減思い知ってくれてもいいのになぁ。
俺はこんなにベタ惚れしてるのに。
全然わかってくれないんだから。
拗ねちゃうぞ、もう。

竜次
「ナオのこと」(優に倣ってみた)

ナオが好きだと自覚して、もう10年になる。
ナオが結婚した時は、さすがの俺も人並みにショックだったが、それでもまだ、俺とナオの関係は良いまま続いている。
旦那とだって二人きりでないとタメ口で話したりしないナオが、人前でタメ口をきくのは相変わらず俺の前でだけだ。
3年前、実に7年ぶりに再会した俺に、昔と同じように話してくれるのが、俺は嬉しかった。
普通の世界には生きていないナオだ。
一般人の俺に、時々見失いかけた自分を思い出させてもらってる、と、ちょっと前にナオが言っていた。
そういう意味で役に立ってやれるのなら、それはずっとそうしてやりたいと思う。
ナオ自身は精神的にはかなり危うい奴で、旦那に出会う前までずっと綱渡りの人生を送ってたし、自殺しかけた実績もあって、それを俺は助けてやれなかったのだから、別に俺とナオに運命らしいものはないのだろうと思う。
でも、だからといって、親友を辞めてやる気はさらさらない。
そう。俺とナオは親友だ。
俺も、ナオにはいろいろと助けてもらった。
暴走族から足を洗えたのは、ナオがいたからだと思う。
いた間はずっと走ってたし、ナオも一緒だったけどね。
辞めようと思ったとき、俺を後押ししてくれたのは、その当時ナオが言っていたたくさんの言葉たちで。
かなり勇気付けてもらった。
ナオの言葉は強いからね、思い出に残っている分だけでも、他の人の生の言葉よりもずっと力がある。
実際、尊敬してるんだ。
だから、ナオが精神的に弱っていて、俺が力を貸してやれるなら、何でも力になってやりたい。
真剣にそう思ってる。
そういう意味で、俺とナオは親友だ。ちゃんと助け合える。
それが、やっぱり俺には嬉しい。

最近、俺に彼女ができた。
俺の家は酒屋で、去年から俺も本格的に後継ぎとしていろいろさせてもらっている。
で、彼女はうちの店で贔屓にしている造り酒屋の看板娘だ。
本当に旨い酒を造る店で、実はナオもその酒の大ファンだから、その彼女と付き合い始めたことを告げたら、ナオは自分のことのように喜んでくれた。
俺は、彼女と結婚するつもりでいる。
それとなく匂わせてみたら彼女も満更でもないようだったので、これはきっとイケるだろう。
それで、お互い所帯持ちになったところで、今後もナオとは一生付き合っていきたいと思う。
ナオは、そんな相手だ。

「暇なのか?忙しいのか?」
タイトル欄に自分の名前を書けと言うから、仕方がない。
先頭行がこの文章の題だ。
何の話かって、作者のことに決まっている。
今、仕事中だろ、おい。
いいのかよ、こんなことしてて。
今日中に帰りたいなら仕事しろよ、仕事。
与えられた分、終わらないだろ。
早くやってさっさと帰ろうぜ。
何? どうせ終わりがないからいい?
はぁ。社会人ってのは大変なんだなぁ。

暇なのか忙しいのかといえば、文也もそうだ。
暇なんだか忙しいんだか良くわからん。
授業にも出ないで何をやってるのかと思えば、
おもちゃ作ってるぞ、おもちゃ。
それも、すげぇ高機能。
また特許取る気か、あいつは。
そりゃ、MIT卒のエリートには高校の授業なんか
退屈なんだろうけどさぁ。
たまには出ろよ、授業も。
俺がつまんないじゃんか。
文也がぶうぶう言うから授業にも出てるけどさ。
つまんねぇんだよ、このババア。
英語なんか、それこそ文也に習った方が何倍も身につくわ。
どぉしよ、フケよっかな。
でもなぁ、途中で抜けると今度は後藤がうるさいし。
あぁ、もう、早く終われよ。
寝ちまうぞ、こら。

おしまい